生命工学科
<生命工学科トピック>

サクラを救え! 僕たちの挑戦と その先の学び。

札幌商工会議所などが主催する「第7回学生アイディアプレゼンテーション」に生命工学科から2チームが参加しました。大学生と地元企業のマッチングを通して、新分野・新商品の創出を目指すこのイベント。学生のアイディアに企業が関心を示せば、製品化の可能性も検討されます。宮本拓也さんと梶田宙さんは、サクラてんぐ巣病を早期発見するためのアイデアを発表しました。

[学生アイディアプレゼンテーション 参加]
(写真左から)

工学部生命工学科4年 宮本 拓也
(帯広柏葉高校出身)

工学部生命工学科4年 梶田 宙
(帯広緑陽高校出身)

病気の早期発見で、
美しい桜並木を守りたい。

——なぜ、学生アイディアプレゼンテーションに参加することになったのですか?

【梶田】僕たちは二人とも学生アイディアプレゼンテーション(以下、アイディアプレゼン)に2年連続で参加しています。前回は別々のチームでしたが、今回は同じチームで出ました。もともと僕は、こうしたイベントで発表をしたいという思いがありました。そんな中、2年次に友池史明先生から声をかけていただいたことが直接のきっかけです。

【宮本】私もきっかけは友池先生から。進路面談の際、将来自分がやりたい卒業研究のテーマを思いつくまま挙げたら、「そんなにいろいろあるなら、アイディアプレゼンに出てみない?」と声をかけられたんです。昔から目立つことが苦手で、最初は乗り気じゃなかったんですが、気づいたら出ることになってて(笑)。発表当日はカンペが手放せず、グダグダでしたが、結果的にはいい経験になりました。それで3年次も挑戦しようと決めました。

——研究テーマは、どちらから提案したのですか?

【宮本】私からです。前回は情報系だったので、今回は生物系に振り切った案にしようと思いました。そこで思いついたのが、「冬にサクラを咲かせたい」という、かなり突拍子もないテーマでした。

【梶田】僕はサクラが好きなので、それを聞いて絶対やりたいと思いました。お正月に満開のサクラの下で初詣ができたらすごいですよね。それで一緒に組むことにしたんです。

【宮本】だけど、すぐに難しいと分かって断念しました。それで、植物を専門とされている新沼協先生に相談したところ、「サクラと言えば、てんぐ巣病という困った病気がある」と教えていただきました。てんぐ巣病は、枝が異常に密生してしまう樹木の病気で、その姿から「魔女のほうき」とも呼ばれています。原因は真菌の一種ですが、薬剤による根本治療法はなく、患部を切除するしか対処法がありません。なので、早期発見が重要です。

【梶田】てんぐ巣病かどうかを調べるには、従来は、コロナ禍で有名になったPCR法が使われてきました。ただ、この方法は時間もお金もかかります。僕たちは、PCR法の代わりにLAMP法という検出方法が使えないかと考えました。LAMP法は、特定のDNAを一定の温度で迅速に増幅させる方法で、PCR法に比べて短時間での検出が期待できます。ただ、僕たち自身も未経験だったので、本当に手探りでのスタートでした。

【宮本】役割分担としては、梶田くんが実験を主に担当し、私は先生との調整役と、梶田くんのメンタルケア担当です。

【梶田】同時期に工学祭の実行委員長(僕)と副委員長(宮本)も務めていたんで、とにかく忙しかったですね。夏休みも、ほぼ毎日実験室にこもっていました。

——研究の到達点と、発表内容ついて教えてください。

【宮本】LAMP法に用いるプライマー、つまり目的のDNAを増やすための“目印”となる短いDNAを、自分たちで設計しました。その結果、てんぐ巣病に感染しているかどうかを判定できるところまでいきました。

【梶田】てんぐ巣病の早期発見にLAMP法が有効であることが確認できたので、発表では次の段階として、持ち運び可能なデバイス(装置)を開発したい、という提案をしました。

【宮本】デバイスが実現すれば、公園の管理人さんがその場で「てんぐ巣病かどうか」を判定できます。陽性であればすぐに処置ができ、病気の拡大を防ぐことにつながります。さらにスマホと連動させることで、手軽に、簡単に、てんぐ巣病の診断ができる仕組みを目指しました。

——反響はどうでしたか?

【宮本】2社が関心を示してくれました。そのうち1社からは「デバイスの開発を手伝いたい」という言葉もいただきました。ただ……。

実験も社会も、甘くなかった。

【梶田】後日、企業の方が面談の時間を設けてくださいました。僕たちは、先方の話を聞く場だと思っていたのですが、先方は、こちらから詳しい説明があるものと考えていたそうです。そこで認識のズレが生じ、結果的にお叱りを受けました。

【宮本】私たちのアイデアの実現に向けて手を差し伸べてくださっていたにもかかわらず、十分な準備ができていませんでした。その場で、社会人としての「常識」を教えていただいたと感じています。結果的にデバイスの開発には至りませんでしたが、私たちには非常に大きな学びになりました。

——大学の中だけでは得られない経験でしたね。発表後について教えてください。

【宮本】私は、この研究を卒業研究のテーマにしました。学会に出せるレベルまで高められそうだ、という新沼先生からの助言もあったし、そもそもサクラをテーマにしたいと言い出したのは私ですから。ただ、1年間このテーマに向き合う中で、自分たちの最初のアプローチが学術的にいかに未熟だったかも見えてきました。プライマーの設計自体に問題があったことも分かり、現在はより正確でスピーディーな検出方法の確立を目指して研究を続けています。卒業研究の発表まで時間がないので、冬休み返上で実験に取り組むことになりそうです。

【梶田】僕は、卒業研究は別のテーマを選びました。アイディアプレゼンで実験器具の扱いに慣れたことは大きなアドバンテージになっていますし、実験で得られたデータに関して先生とディスカッションできるようにもなりました。実験につまずいた時は宮本くんに相談したり、逆に僕が相談に乗ったり。研究室は違いますが、仲間として支え合っています。

——アイディアプレゼンの経験が活きていますね。最後にメッセージをお願いします。

【梶田】アイディアプレゼンは、北海学園大学にいたからこそ経験できたことだと思います。友池先生や新沼先生は、とても親身になって相談に乗ってくださり、常に応援してくださいました。卒業研究でお世話になっている高橋考太先生も同じです。困っていると、すぐに「どうした?」と声を掛けてくださり、時間を割いて聞いてくれます。こうした先生方の存在は、生命工学科の大きな魅力だと感じています。

【宮本】もともと情報系に興味があったのですが、気づけばバイオ系にどっぷり浸かっていました。アイディアプレゼンで実験の面白さを知ったこともそうですし、それができたのも情報系とバイオ系の両方を幅広く学べる生命工学科だからこそ。実際、バイオ系の学びが活きて、就活では医療事務の内定をいただくことができました。アイディアプレゼンで身についたアドリブ力も面接で役に立ちました。梶田くんと重なりますが、先生方は本当に学生一人ひとりに向き合ってくれます。実験のことも、就活のことも。優しく、頼りになる存在です。特に新沼研究室はおすすめです。倍率は高いですが、挑戦しがいがありますよ。