ものづくりの国際規格開発に挑戦。
——電子情報工学科では何を学べるのでしょうか?
電子情報工学科は、電子工学と情報工学の両方を学べる学科として1987年に誕生しました。私はその2年後に着任しましたが、今はスマートフォンのように、ハードウェア(電子工学)とソフトウェア(情報工学)を組み合わせて製品やサービスを作るのが当たり前の世の中です。両方をハイブリッドで学ぶことは、これからますます重要になります。
——菊地先生の研究テーマについて教えてください。
私の専門は、設計や生産における情報のモデリングです。
現在は、飛行機1機、自動車1台をまるごとコンピュータ上で設計し、生産する時代です。国際分業が進み、ボーイング社の旅客機の主翼や胴体の一部を名古屋の複数の工場で製造して送るといったことが行われています。
このような体制の下で設計や製造に関する情報を、世界中のビジネスパートナーとの間で正確にやりとりするためには、共通の決まりごと=国際規格が必要です。私は、これらの製品データ情報の交換・共有に向けた国際規格を作る団体(ISO)の活動に30年以上携わってきました。

私が開発に参加したものに「ISO 10303-62」(2018年発行)があります。これは経済産業省のプロジェクトとして私も参加して実施されたものですが、データが正しく変換されたかどうかをチェックする仕組みを定めた規格です。例えば、CADで作られた3Dデータを別のシステムで変換したとき、形や寸法が正確に保たれているかを検査します。いわばデータの「品質保証書」のような存在です。
——「日本発」の国際規格なんですね!
そうです。日本が主導して国際規格を開発することは、日本のものづくりの信頼性を世界にアピールすることにつながりますし、日本企業の新しい参入機会にもなります。航空機や自動車産業に経済的な貢献ができるのは大きなやりがいです。
現在は規格開発以外にも、投票担当として新規開発規格案に対しての日本としての投票案を取りまとめを行っています。
うまくいかない経験が、技術者としての姿勢と思考を育てる。
——菊地研究室での卒業研究について教えてください。
3Dプリンタやドローン、Virtual/Mixed Realityといったデバイスを使い、学生一人ひとりが自分のテーマを決めて研究を行います。


——これまでにどんな研究テーマがありましたか?
3Dカメラで撮影した映像を影絵のようなアバターにして、プロジェクターで映し出す研究や、ドローンが人の動きを自動で追尾する「アクティブトラック」の開発に挑んだ学生もいました。後者は、対象となる人物の体の中心を狙うようにドローンへ操縦コマンドを送るという研究です。
——どれも、ワクワクする研究テーマですね。
もちろん、簡単には完成しません。CPUの処理速度が足りなかったり、通信がネックになってうまく作動しなかったり、課題は次々に出てきます。先ほどのアクティブトラックの研究も、最終的には完成に至りませんでした。
——それは失敗だったということですか?
むしろ、卒業研究としては成功です。技術というのは、さまざまな要素の組み合わせで成り立っています。うまくいかなかったとすれば、どこかに原因があるはずです。その原因を探り、課題をクリアするための方法を考え、実践し、検証する。この繰り返しです。
卒業研究では、最後に全教員と学生が参加する発表会を行います。研究のプロセスでどんな課題が立ちはだかり、それに対してどう対処したか。一つひとつを明確に説明できるようになることも、卒業研究における大事なポイントです。

——最後に、受験を考える皆さんへのメッセージをお願いします。
卒業研究に限らず、学生時代に経験したこと、体験したことは、そのまま人生における栄養となります。4年間は長いようであっという間です。授業以外のことでも構いません。なんでもやってみる精神で挑戦してください。
