建築学科 特集
<建築学科トピック>

建築調査で訪れた ガーナで考えた。 豊かさってなんだ!?

流郷さんが卒業研究の舞台に選んだのは、西アフリカの国・ガーナ。10日あまり滞在し、非正規市街地と呼ばれる地区を歩き回って現地の建物を調査しました。どんな建物のつくりをしているのか。壁は何でできているのか。構法と素材を丹念に記録する日々。現地の人と出会い、生活に触れる中で、いつしか「豊かな暮らしとは何か」という問いが胸に芽生えたと、振り返ります。

[卒業研究参加]

工学部建築学科4年 流郷 駿
(市立札幌清田高校出身)

初海外は、ガーナでした。

——卒業研究のテーマを、ガーナでの調査に決めた理由を教えてください。

3年次の冬、卒業研究の説明会で清水信宏准教授の研究室がガーナで調査を行うと知り、やってみたいと思いました。もともと歴史が好きで、伝統的なコミュニティを対象にすると聞いて興味が湧いたんです。初めての海外がガーナというのも、純粋に面白そうだなって。

——研究の内容について教えてください。

大阪大学の木多道宏教授の率いる研究プロジェクト「地域文脈を継承する非正規市街地改善モデルの構築と危機的課題の複合する地域への適用」の一環で、ガーナの首都アクラにあるAbese地区を調査しました。アクラには、正規のプロセスを経ずに形成された非正規市街地が数多く存在します。アクラの非正規市街地には、伝統的なコミュニティによってつくられたものからより新しいものまで存在しますが、Abese地区は前者、つまり伝統的なコミュニティが今も息づく地域に分類されます。そうした伝統的な文化をリスペクトしながら、どうやって都市をアップデートしていくのかというのが、研究プロジェクト全体の大きなテーマです。

——具体的には、どのような調査を行いましたか?

建築的な側面から見た地域の実情を知るため、Abese地区を何日もかけて歩き、つくり方と使い方を一軒ずつマップ上に記録しました。注目したのは素材です。地域の建物には、コンクリートブロックや鉄筋コンクリート、石、Mud(泥ブロック)といった建材が使われています。泥ブロックというのは、アリ塚の近くで取れる土に水を混ぜて固めた伝統的な建材です。それを使った建築が今どれくらい残されているのかを調べました。

見た目だけでは判別が難しい場合もあります。泥ブロックとコンクリートブロックの建築はパッと見、表面が塗られていてよく似ているため、迷ったときはコンコンと壁を叩いて確かめました。最初はよく分からなかったのですが、やっていくうちにだんだんと音や手触りの違いが分かるようになっていきました。コンクリートに比べて、Mudはちょっと軟らかいんですよね。調べていくうちに、壊れた泥ブロック部分をコンクリートブロックで補修した建物も多くあることが分かってきました。北側の伝統的街区と南側の新しい街区では、素材の違いがはっきりと表れていました。北街区には一部に泥ブロックが残っていて、南街区はコンクリートブロックが多く、泥ブロックはほとんどないという傾向が見られました。

豊かな暮らしって、なんだろう?

——現地を訪れて、ガーナの印象は変わりましたか?

日本で調べていたときは、非正規市街地の人々は、貧しく、厳しい生活を強いられていると想像していました。でも実際に行ってみると、もちろん経済的な課題はあるものの、みんな陽気で、子どもたちは元気に遊んでいるし、大人たちも気さくに声をかけてくれたりして、どこか、気持ちに余裕があるように感じました。一緒に作業をしていても、義務感だけで動いている感じがない。時間や約束は守りながらも、ガチガチに縛られていない。その空気が、みんなの表情を明るくしているのかもしれません。

——建築の調査を通して、豊かさについても考えたそうですね。

同行した清水准教授が、「豊かな暮らしをつくることが建築の役割の一つとすれば、まず”豊かさ”を考えないといけない」と話してくれました。まさかガーナで、そんな問いに向き合うとは思ってもいませんでした。

——調査を終えて、感じていることは?

そうですね。調査マップを見ると、伝統的な泥ブロックは明らかに減少しています。壊れた部分をコンクリートブロックで補修する家も増えていました。効率や強度を考えれば自然な流れかもしれません。でも、泥ブロックは地域の人たちが自分たちの手で作ってきた素材です。そこには「つくること」そのものに価値があったのではないかと思います。

一方で北街区にあるクランハウスには、伝統的にコミュニティの人々が集まるための空間が存在していました。建物はやはり鉄筋コンクリート造のものに置き換わりつつありますが、人が集まる場所としての役割は残っていました。大事なのは、素材だけなのか、それとも空間の意味なのか。何をリスペクトし、何を更新するのか。それを考えることも建築学なんだと改めて気づきました。

大学に入る前は、建築は形をデザインすることだと思っていました。でも実際は、人の暮らしや文化まで考える分野です。北海学園大学には、さまざまな分野に精通した先生方が在籍し、さらに外部からも非常勤の先生が数多く来て、1年次から多角的な視点で建築を学べます。この4年間で、その広さと奥深さに出会えたことが、大きな収穫です。