INTRODUCTION
「まちづくり」という言葉の、
その先へ。
広場や通り、いつもの居場所。その風景の裏側には、たくさんの人の仕事と工夫があります。今回は札幌駅前通まちづくり株式会社さんを訪ね、「まちづくり」の現場や想いに触れました。使う側から、つくる側の視点へ。日常の見え方が少し変わる体験をお届けします。
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2部 法学部
政治学科 2年
下山琢人
丸いまちづくりと
四角いまちづくり
チカホ、アカプラを運営している「札幌駅前通まちづくり株式会社」
みなさん、こんにちは。
北海学園大学 2部 法学部 政治学科2年 下山琢人です。
私がまちづくりに興味を持ったきっかけは、高校生の時に友人とサイクリングをした時でした。その日、サイクリングロードを走っている最中にテニスコートで汗を流す人たちやベンチに腰を掛けた老夫婦、散歩道で乳母車を押す母親など多くの人を見かけました。彼らの笑顔や豊かな生活というものが私の周りでうまくまとまっている、その「まち」の構成の美しさに感動しました。そこから将来は、まちづくりに携わりたいと考えています。私はもともとまちづくりとは行政が行うものだと思い、市役所職員としてまちづくりに貢献したいと考えていました。大学広報サークル ぴあるで活動するなかで、実は民間でもまちづくりを行う事があることを知り、少し驚き、その会社について興味を持ちました。
みなさんは「札幌駅前通地下歩行空間」、通称「チ・カ・ホ」を利用したことはありますか?
「チ・カ・ホ」とは、札幌駅からすすきのまでを繋ぐ地下歩行空間です。札幌市民のみなさんや札幌に訪れたことのある多くの方が利用したことがあると思います。
それでは、この「チ・カ・ホ」は、だれが管理運営をしているのでしょうか?
実は「札幌駅前通まちづくり株式会社」という民間企業が管理運営を行っているのです。そこで今回は「札幌駅前通まちづくり株式会社」の代表取締役社長 内川 亜紀さんに、行政と民間のまちづくりの違いや、会社で行っているプロジェクトについてお話を伺います。
さっそく、まちづくりに興味を持ったきっかけから聞いてみました。

──自分はサイクリングを通じてまちづくりに興味を持ったのですが、内川さんがまちづくりに興味を持ったきっかけは何ですか?
内川さん「幼少期に住んでいた場所に大工さんが多くいたので、小さい頃は大工になりたいと思っていました。そこから成長するにつれ建築士を目指すようになり、大学院修了後は集落の建物や文化財など歴史的建造物の保存活用に関する調査活動などを行っていました。当時、直接的にまちづくりに関わっていたわけではないですが、文化財の建物を残す活動をするにつれて建物の周りの環境の重要性に気づいていって。そこから今のまちづくりの活動に繋がっていると思っています。その後、今の会社にご縁があり入社することになりました。」
──まちづくりとは行政が行うものだと思っていました。実際にまちづくりに関わる内川さんは、まちづくりとはどのようなものだと考えていますか?
内川さん「まちづくりはまちを使う人が主役になって場所の価値を一緒に作っていくプロセスだと思っています。私たちはチ・カ・ホやアカプラを管理運営していますが、単なる通路や空き地ではなくて、人の活動があることによって意味が生まれてくると考えています。その可能性を開くためにいろいろなアクションを重ねながら“このまちはもっと面白くなる”みたいな実感を育てていく営みもまちづくりだと実感しています。」
まちづくりとは場所の価値を育てていくこと。私はこの話を聞いてとても納得しました。私がサイクリングで感じた人々の幸福は価値そのものだと思うし、価値を作ることは住民の生活を豊かにすることに直結すると思うので、とてもいい話を聞くことができました。
では、その価値を作るために民間と行政それぞれどの様なまちづくりを行っているのでしょうか?
内川さんに民間と行政のまちづくりの違いを聞いてみました。

──行政のまちづくりと民間のまちづくりにはどの様な違いがあると思いますか?
内川さん「行政も民間も、まちづくりにおいてどちらも必要だと実感しています。行政がまちづくりにおいて得意としているのは、公共性・公平性・制度を維持していくかだと考えています。一方で、その大きな枠を尊重しつつ、行政のみなさんが整えた制度を活用する、柔軟性やスピード力、試してみるといった実験性も必要です。そこが民間のまちづくり、我々のようなエリアマネジメント組織が必要とするところかなと思っています。まちの可能性を広げていく伴走者みたいな形で機能していると捉えています。」
制度や仕組みを整える行政と柔軟に活用する民間。どちらも重要であるということを教えていただきました。これはまちづくりだけでなく多くの物事に言えることで、何かを作り出すには型にはまったきっちりとした部分と自由で柔軟で丸みを帯びた部分の二つが必要であるとお話を聞いて感じました。
続いて、行政と民間のまちづくりの違いを具体的な事例から紹介していきます。
──チ・カ・ホを作るときの行政のまちづくりエピソードを教えてください。
内川さん「チ・カ・ホを作るときに市民の方々から、常ににぎわっている空間であってほしいとか、閉塞感のない日の光が注ぎ込む空間であってほしいなどいくつかの意見や要望がありました。本来であれば道路の扱いなので、イベントを行うことができないチ・カ・ホやアカプラを行政である札幌市さんが市民の要望を実現できるように仕組みや制度によって解決していただいたことで、今のようなイベントを行える空間ができたのです。現在はその仕組みを活用して、私たちがマルシェやイベントの企画運営をして場づくりを進めています。」
制度や仕組みを条例や法律によって形にすることは行政にしかできない。それが行政の強みなんだということを教えてくれました。チ・カ・ホやアカプラを作る際に行政の強みを生かした働きによって今のような賑やかで楽しい空間ができている、この話を聞いて行政によるまちづくりの重要性を実感することができました。
次の質問は、民間のまちづくりについて「札幌駅前通まちづくり株式会社」の活動の一つであるアート関係のプロジェクトを通じて聞いていきます。
──「札幌駅前通まちづくり株式会社」ではアート関係のプロジェクトも多く行っていますが、アートとまちづくりの関係や重要性はどのように考えていますか?
内川さん「日常生活だと経済合理性や機能を意識しながら過ごすことが多いと思いますが、アートはそういった論理的な考えでは説明できない価値をまちに与える存在なのかなと。特に公共空間の場では、アートがもしかしたら人の想像力を開くきっかけになるかもしれないし、立ち止まる理由を作るとか、その場所のらしさを表現するとか、そういった役割を持ってくれてると考えています。」
まちづくりとは場所の価値を育てていくものだと先ほど教えてくれましたが、アートもその価値の一つであって、経済合理性や機能ももちろん重要ではあるけれど、こういった別ベクトルの価値をまちに与えることができるのは柔軟で実験性のある民間の最大の特徴であると感じました。
そんな民間のまちづくり会社に勤めている内川さんに、まちづくりエピソードを聞いてみたいと思います。

──これまでの活動で内川さんが印象に残っているプロジェクトはありますか?
内川さん「アカプラを立ち上げた時が一番印象に残っています。一から自分たちで考えた事例だなと思っていて。アカプラは社会実験からその後の仕組み、管理運営まで全て関わって検討できたことが印象として大きいです。また余談にはなりますが、文化財を研究してきた人間として国の重要文化財である赤れんが庁舎が見えるまちづくりでないといけないと考え、実現しました。
さらに、フラワーカーペットやさっぽろ八月祭のような地域に愛される企画を定着させていくことができたことも大きな成果だと思います。まちが一気に変わることではなく、関わる人のいろいろな試行錯誤の連続の中で形になっていく、その実感を得られた良い経験でした。」
なんと内川さんはアカプラの仕組みに携わったご本人でした。私は個人的にアカプラが好きで、知り合いとご飯に行った後にアカプラでお話しすることが多くあったのですが、そんなアカプラを担当したご本人のお話を聞けてとてもうれしかったです。以前に文化財を扱うお仕事をして、そこから今のアカプラに繋がっているということでした。過去を残す活動から未来を作る活動へ、一見相反する二つですがまちや建物の価値を残すという点においては近い部分があるのかなとお話を聞いて感じました。
最後にまちづくりの魅力やまちづくりに興味のある学生に向けたアドバイスをお聞きします。
──内川さんの思うまちづくりの魅力は何ですか?
内川さん「正解が一つではないことがまちづくりの魅力だと考えています。人の数だけ価値観も違うし、その価値観が重なって新しい景色が生まれるなと思っていて。予想外にいろいろな人が関わることによって、自分が想定していなかった変化や気づきのようなものがあると感じています。小さなこともあるけど、その自分の関わりがまちの空気を変えたり、変わるきっかけなったり、人の行動を変えるきっかけに立ち会えたり。そういった少しずつまちの未来を変える瞬間に立ち会えるところに、本当に大きな魅力があると考えています。」
変化に立ち会えるという点は、まちづくりに携わるひとの特権であり、まちづくりならではの魅力だなとお話を聞いて感じました。自分の考えや働きによってまちが変化する、より良いものになっていくのはやりがいも大きいだろうし、きっとすごく楽しいことなのだろうなと思いました。

──最後に、まちづくりに興味がある学生さんにアドバイスをお願いします。
内川さん「まちづくりは都市開発や建築のような専門性が必要だと思われがちですが、私自身はまちのいろいろな違いを日々感じ、問い、想像して行動する心から始まると思っています。それは行政だろうと民間だろうと市民だろうと、関わり方は無数にあるので、そのまちを使うこと自体が、まちづくりの一歩かなと考えています。ぜひ興味のある場所に足を運んでもらって、気になることは試して、まちを自分事だと感じてみてほしいです。就職活動は、どの組織に入るかが大事なわけではなくて。自分がまちでどんな過ごし方をしたいのか、どんな変化を起こしたいのか、という視点を大切にしてほしいなと考えています。」
まちづくりは専門性やどの組織に入るかではなく、日々まちを感じて想像し、自分はこのまちをどう変化させたいか、どのようなまちであってほしいか、そういった自分の視点でまちを見つめることから始まる。
みなさんもまちを歩くときは、今まで以上に多くのものに目を向けて、自分の意見や感想、視点を持ってみてはいかがでしょうか。もしかしたら、そこからまちに興味を持って、あなたのまちづくりが始まるかもしれません。

──さいごに
内川さんのお話を聞いて、民間のまちづくりと行政のまちづくりの特徴や強みを知ることができました。まちづくりとはまちの価値を育てていくこと、それには行政の強みである制度や仕組みを作り維持していくことと、民間の強みである柔軟で自由な活動と、そして何よりまちの主役である住民の三者が一緒に可能性を探していくことが必要であるとお話を聞いて強く感じることができました。私もこれからまちを歩くときにはたくさんのものに目を向け、このまちへの感想や意見を持ち、僕のできる範囲でまちづくりに参加したいと考えています。
